もう14年も前なんですね。遠い過去。
当時、亡くなったというニュースを見たことは覚えている。だけどその頃はファンになっていないどころか存在をほとんど知らなかったくらいだったので、そこまでショックを受けてはいなかったと思う。とはいえ今でも覚えているくらいだから、心に残るものがあったのは事実なのだろう。
朝起きてニュースかワイドショーかで見て、父親にこの人なんの人?って訊いて、ZARDの人、と返ってきたような気がする。だけど私はZARDという名前を知らなかった。「負けないで」には聞き覚えがあったけど、それくらいだった。人が若くして亡くなったという事実にはおそらくショックを受けていたけれど、その人を知らないからそれ以上にはならず、ふーん、という感じだった。
私がファンになったのはそれから2、3年が経ってからだった。13〜14歳の頃。
センバツの入場行進曲を集めたアルバムを地元の図書館で借りた。岡本真夜の「TOMORROW」を聴きたかったからだった。まあそのアルバムはブラスバンド演奏を収録したものだったので歌は入っていなくて、ちょっとがっかりしたのだけれど。がっかりしながらも聴いて、その中にあった「負けないで」がいいなって思ったのが最初の出会いだった。
そしてその流れで『Golden Best 〜15th Anniversary〜』を借りた。ZARD、好きだと思った。繰り返し聴いていた。
ただ、その流れとは別の方向からも出会っていた。どちらが先だったかは正直わからないのだけれど。
当時、実家ではケーブルテレビに入っていた。私は暇な時にケーブルテレビでやってるアニメを見るのが好きだった。アニメが好きというよりは、アニメのOP曲やED曲を聴くのが好きだったという方がいいかもしれない。そこで出会った好きな曲を何曲か覚えている。
よく見ていた中に、ドラゴンボールGTがあった。そのOPがFIELD OF VIEWの歌う「DAN DAN 心魅かれてく」で、とても好きだった。しばらくしてから、アニメの放送がなかった時、ふと思い出して聴きたくなってYouTubeで検索した。だけど、歌っているグループの名前を覚えていなかったから、どれが本家かわからなかった。そもそも歌っているのが男性か女性かすら覚えていなかったと思う。
そこで最初に目に入って再生したのがZARD版の「DAN DAN 心魅かれてく」だった(坂井さんの作詞提供曲なのでセルフカバーということになる。アルバム『TODAY IS ANOTHER DAY』収録)。繰り返し聴いた。好きだった。
ドラゴンボールGTで流れていたのとは違う人が歌っていることを知ったのはずいぶん後だった。最初にFIELD OF VIEW版に辿り着いていたら、今の自分はないだろう。そういう意味であの時のYouTubeに感謝している。FIELD OF VIEWも好きですけどね。
それがもう一つの流れ。でもこの時はZARDを知らなかった可能性が高いので、もしかしたらこっちが先なのかもしれない。
このあたりで好きになっていったのだけれど、トドメはYouTubeで聴いた「あの微笑みを忘れないで」だったと思う。これを聴いて完全にファンになった。
中高の間、たくさんアルバムを借りまくって、ほぼ全曲を集めた。ずっと聴いていた。そして今に至る。
何年か前から5月27日には一日中ZARDを聴くようになった。ZARDを憶える日として。
全曲聴くと半日くらいかかるので、寝てる時間以外ずっとという感覚だ。
それが今年は就職してしまい、しかも平日なのでできなかった。悲しい。聴けるだけ聴こうとはしているのだけれど。今は「good-night sweetheart」が流れている。
ここからが本題。(前置き長いな……)
今日、ZARDが事前収録ではあるけれどライブの配信を行っていた。高台寺で行われたアコースティックライブ。
5月28日までの期間限定公開なので見るならすぐにどうぞ。(追記:公開終了したのでリンクを削除しました)
そして私はこのライブを見て、初めてZARDを喪ったと感じたのである。
故人で商売をするようなこれまでのビーイングのやり方を好きになれないとか、そういう複雑な気持ちはここ数年あるのだけれどそれは今は一旦置いておく。
今まで述べてきたように、私がZARDを知ってファンになったのは没後のことなので、正直その死をちゃんと感じたことはなかった。
新しく出る曲ももうないし、もう歌声が変わることもない。若いままの見た目も変わることがない。生きていればもう54歳だけれど、我々が目に出来るのは40歳までの彼女だけである。時が止まっている。
生きている当時を私は知らず、亡くなったことも実感がない。没後に出会っているから、もう亡くなる事もない。もう失うことがない。
そんな私にとって、ZARDはずっと永遠の存在だった。
だけど、今日のライブを見て、強烈に喪を感じたのである。
素晴らしいアコースティック演奏と、高台寺の神聖な空間。そして、ステージ中央にはモニターがあって、そこに坂井さんの映像が流れている。演奏に合わせて坂井さんの歌声が流れる。もうこの世にいない人の歌声でライブをする、強烈な違和感。真ん中にいるはずの人はもういないはずの人。奏者の人々は、そこに彼女がいるかのように奏でているようにも見える。しかしそんなことはなく、いないことを知っていて奏でている。その映像は喪だ。葬の儀式と言ってもいいかもしれない。見ていて怖さを覚えた。そして、私は彼女がもうこの世にいないことを強く感じたのである。私は初めてZARDを喪ったのである。
このようなライブはおそらくこれからも毎年のように行われる。ZARDを永遠の存在としようとする意図が多分ビーイングの中にはある。実際、今回の映像を見ていても、変わらない歌声と見た目だった。年齢を重ねさせてあげてほしいと思うくらいには、ずっと同じだった。
確かに永遠。
だけど、私にとっては、その永遠が壊れたような感覚を抱いたライブだった。
そして一回壊れて、喪に服した後はきっとまた永遠の存在となるのだろう。
これからもずっと変わらない歌声をずっと聴き続ける。ただ、もうこの世にいないことを知った。それだけだ。