思い出の向こう側

好きなものや思い出について書いたりしています

お好み焼きパン

小さい頃の話。

 

日曜日には午前中家族でお出かけをして、帰りに駅のショッピングセンターに寄ってその中にあるパン屋さんでみんなそれぞれ好きなパンを買い、帰って家で食べるということがよくあった。ありふれた街のありふれたパン屋さん。特別美味しかった訳でもなかっただろう。ありふれた光景。でも好きだった。今思えば幸せな時間。

 

私のお気に入りはお好み焼きパンだった。もうどんな形だったか、味だったかも思い出せない。美味しかったということと、その幸せな空気だけが残っている。

 

今でもお好み焼きパンを見かけるたびに懐かしくてつい買ってしまう。それは美味しくてやはり懐かしいけれど、また一つ足りないような気がしてくる。きっとあの時の家族と過ごしている空間がとても美味しかったんだろうな。

親元を離れて一人暮らすこと5年、こういう懐かしさに囚われることが多くなった。

 

そのショッピングセンターは今はもう別の店に変わってしまった。パン屋さんももうない。

あのお好み焼きパンをもう一度食べたいけれど、きっとそれは思い出にしまっておくのがいいのだろう。あの頃のありふれた幸せな光景とともに。