思い出の向こう側

好きなものや思い出について書いたりしています

私は一本の傘をずっと愛用している。赤い傘である。

 

ずっと、がどれくらいずっとかと言うと、中学から高校に上がる頃からである。壊れたり失くしたりして何度か買い替えているから、厳密には一本ではない。だけどずっと同じものを買っている。こだわりのようなものだ。

 

その傘は無印良品の、「しるしのつけられる傘」。1本1990円である。

 

地元駅前の無印良品で父親に買ってもらったのが始まり。なんで買ってもらったのかは定かではないが、多分それまで使ってたのが折れたとか、失くしたとか、そういうことだと思う。それまでの私は本当に適当に傘を選んでいたような気がする。ビニール傘は好みではないので使っていなかったが、なんか普通な感じの1000円くらいの傘を使っていたと思う。青が多かったような気がするけど、もうなんも覚えてないな。持ち手がプラスチックだったか木だったかすらわからない。多分なんでも良かった。まあ全部親に買ってもらってたんだけど。

 

で、その時無印で傘を買うことになって、品揃えを見た時、確か今まで使ってきたような傘はあまり置いてなかったから、しょうがなくその赤いやつを選んだ。いや、積極的に赤を選んだんだっけ……?別に赤しかなかったわけではなかっただろうから、もっとおとなしい色のもあったはずで、それを選んでも良かっただろうに。父親は覚えているだろうか。一回聞いてみるか。

 

そんなこんなで、それまで地味な色の傘ばかり使っていた私が、赤い傘を使い出した。

最初のうちは恥ずかしい気持ちも多分あったけど、そのうちもう気にならなくなっていった。何より目立つおかげではぐれずに済む。最高。

 

その傘を高校を卒業するまで使い続けた。多分買い替えたりはしていないから、3年は使い続けたはずだ。我ながらよく失くさなかったな。

 

大学に入学して京都に引っ越すときにその傘は実家に置いていった。数年前までは確かまだあったはずだ。もう錆びてボロボロになっていた。今は知らない。もう捨てられたかもしれないな。

 

京都に来てから、しばらくはその傘を使うのをやめていた。ビニール傘を使うことが増えていた。200円くらいでドラッグストアで買うか、500円くらいでコンビニで買うか、みたいな。壊れたら買い替えて、特にこだわりもなく過ごしていた。でも、あまりにも壊れ過ぎていた。実家にいた頃は3年持ったのに、2〜3ヶ月で壊れてしまう。これならちゃんとした傘を買った方がよっぽど経済的だ。

 

それで2016年、ついにあの赤い傘を買うことにした。別に色は赤である必要はなかったんだけど、あの色が好きだったし、思い出も込みで同じものを買った。1990円で、高いなぁと思いながら買ったのを覚えている。父親に買ってもらった時は値段なんて気にしていなかったから、今更ながらいい傘使わせてもらってたなぁという気分になった。

 

それから6年。確か2回くらいは買い直した気はするけれど、それでも平均2年くらいは持った。今でも使い続けている。

 

その傘が先日壊れた。親骨と受骨を繋ぐ「ダボ」と呼ばれる部分が一つ折れ、受骨が外れてしまった。よくある壊れ方だ。無念。骨自体は折れていない。まだ丈夫だ。でも外れてしまっているから、傘を開くと受骨が一本浮いた状態だ。普通に危なくて仕方がない。ダボを繋ぎ直すか、いっそ受骨を根元から折ってしまった方がいいってレベル。

 

しょうがないので買い替えようと、今日無印良品に行ってみた。

お目当ての赤い傘が売り場には見当たらない。売り切れているだけかもしれない。ネットストアのページで「傘」と検索してみる。

赤はない。

いつの間にか、取り扱いがなくなってしまっていた。もうあの赤い傘を買うことはできない。本当に無念である。

今私は、この壊れた傘を使い続けるか、それとも修理するかで悩んでいる。壊れたまま使い続けるのは冴えないし、修理するくらいなら買い替えたほうがいいのはわかっているが、それでも諦めきれない思いがある。

 

いっそもっと高い、いい傘を買ってしまうか。色は赤で。

 

(追記):

先日、近所にある傘を修理してくれるお店にこの壊れた傘を持って行ったところ、「ウチでは修理できない」と断られてしまった。

ダボが金属製のやつならできるけれど…とのこと。他に修理してくれる店のアテもないし、あったとしてもそこまでの交通費を考えたらもう買った方が良さそう。というわけで残念ながらこの傘はここまでになりそうだ。