思い出の向こう側

好きなものや思い出について書いたりしています

好きな色

子供の頃、友達とかから好きな色を訊かれることが稀によくあった。好きな色、みたいなどこか純粋で素朴なものが話題になることが多かったあの頃。そういうものしか知らなかった頃、と言えるかもしれない。

 

大人になった今となっては訊かれることなんてないけれど。

今だってそういう話題で盛り上がったりしてもいいんじゃないのかな、なんてたまに思う。戻りたい過去とかがあるわけではない人間だけれど、そういうところではふと子供の頃に戻りたくなるような気持ちになる時がある。疲れているんだろうな。

 

 

それは置いておいて。

あの頃、好きな色を訊かれた時に私は「緑」と答えていた。あるいは紫とかだったか。どこか斜に構えるようなところがある子供で、素直に答えたくても答えられないような心を持っていたから、本心だったかというと正直怪しい。

 

もちろん緑は好きだったけれど、別に特別好きというほどではなかった。他の、例えば水色とかと同じようなレベルでうっすらと好きだったと思う。特に好きな色がなかったから、周りの目みたいなものを気にしながら答えていたのかもしれない。だからといって周りに合わせるわけではなく、むしろ逆だった。逆張り精神。アンチマジョリティー的な性格はこの頃からずっとあるような気がする。そういう意味ではなんか目立ちたがり屋だったのかな。

 

緑のような地味目の色が好きっていうのが渋くて大人っぽくて(子供っぽくなくて)格好いいって価値観を持っていたから、それで多分緑って答えてたんじゃないだろうか。周りが青だとか赤だとか言ってる中で緑って答える僕大人、みたいな。

周りからこう見られたいからこう答える、という思考が染み付いた子供だった。好きでもないものを好きというわけではなく、好きではある中で周りからの見え方で選んでいるので、嘘をついているわけじゃない、というようなズルさもあった。

我ながら嫌なガキだ。それにそういう思考って幼稚で、青とか赤とかを素直に答えていた子よりよっぽど子供っぽいな、と今になって思う。

 

とはいえ、一度緑と答えたことによって、私は緑が好きな人間であると思い込むようになった。だからずっと好きな色は私の中では緑だった。

 

だけどいつからか、好きな色が変わっていた。いつの間にか、という感じだ。いつからなのかはわからない。

緑と同じように、捻くれ精神からきた逆張りが、いつからか本当に好きだったかのように思い込んでいるだけかもしれない。だけど、少なくとも今、好きな色はなんですか?と訊かれたら胸を張ってこの色を答えるだろう。もしかしたら子供の頃から本当はこの色が好きだったのかもしれないなんて思う。ようやく素直になれたのだろうか。あるいは本当に好きな色というものがようやく出来たのだろうか。どちらにせよそれは本当に喜ばしいことだ。

 

 

今、私が好きな色は「赤」です。真っ赤というよりは少しくすんだような、ワインレッドやボルドーとか。