思い出の向こう側

好きなものや思い出について書いたりしています

豆腐

好きなものについて書くやつです。今回は豆腐。

 

 

私は豆腐が好きだ。うどんほどではないし、ラーメンやトンカツにもまあ負けるけど、好きなのは好き。好きな食べ物は?と聞かれた時に、頭に思い浮かぶもののうちの一つ。

 

だけど、子供の頃からずっと好きかというと、別にそうでもない。多分。覚えていないだけかもしれないけど。

小学生までの間で豆腐について残っている記憶は、移動教室(修学旅行的なやつ)で八ヶ岳に行った時に豆腐作り体験をしたことだけだ。いくつか体験を選べる中でそれを選んだわけだから好きではあったんだろうけど、それ以外の印象がないのでその辺の普通に美味しい食べ物の一つでしかなかったと思う。

 

転機は中学一年生の時だった。私は将棋部に入り、日々部活に打ち込んで遊んでいた。そんな中迎えた誕生日、先輩が何か奢ってくれる事になった。この部では誕生日にあまり喜ばれないだろうものを奢るという悪しき楽しい風習があった。当然ながら祝われる側に選択権はない。

その奢りの舞台となるのは、大抵は学校裏手にある中村酒店(「なかむらや」と呼んでいた)だった。ここかあるいは生協が、中高生にとってはカップ麺やお菓子やジュースを買う場所だった。なかむらやは小さい個人商店で、野菜とか調味料とかも売ってたりした。

そしてそこで私が奢ってもらったのが、豆腐一丁ときゅうり一本だった。情けで食卓塩もあった。多分合計で300円行かないくらいだと思う。

当たり前だが嬉しくはなかった。だって豆腐ときゅうりですよ?嫌いじゃないけど、誕生日にわざわざ食いたいか?豆腐も小さいのならともかく、一丁はいくらなんでも多い。せめて醤油が欲しい。

しかし、ここで私の負けず嫌い、意地が発動してしまった。平然と美味しそうに食べることで、苦しんでいる姿を見たいという先輩方の目論見をかわそうとしたのである。

きゅうりは一本だけだし実質水なのであっさりクリア。

問題は豆腐である。今まで多分醤油でしか食べたことがなかったので、未知の領域。恐怖だ。塩で食べてみる。案外いける。食えるじゃん。

ということで、おそらく時間は結構かかっていただろうけれどきっちり完食した。

これは余談だが、この辺りで「塩で食う」事に目覚めた感がある。焼き鳥も塩派になったし、トンカツも塩が至高と思うようになった(これは坂井精肉店の「塩カツ丼」の影響が大きいが)。

 

おそらくこの時、私は私が豆腐を好きだという事に気づいたのである。

それ以後、自分からおやつとしてなかむらやで豆腐を買うようにもなった。単純に美味しいのもあるけれど、悪しき風習効いてませんよアピールと、変人になりたいお年頃とが組み合わさったのだと思う。その結果豆腐好きのキャラがついてしまった。

 

それからは実家でも豆腐をすごく好んで食べるようになった。私の前に豆腐の皿が置かれると私が全部食べきってしまうから、家族が先に食べてから私が残りを食べるようになったりもした。

 

ここからは私の好きな豆腐の食べ方を書いていきます。絹ごし派です。あと朧豆腐は神。あれは飲み物。

胡麻油+醤油+ネギ

王道of王道。一番好き。実家でよく食い尽くしていた。胡麻油は多めがいい気がします。あと香りが強いやつの方がいいと思う。ネギはあった方が断然いい。絹でも木綿でもいい。醤油は適当に。醤油の代わりに塩でも良い。

鍋にドボン

鍋に入っていると彩りが生まれる。油揚げやこんにゃくと並んでどの鍋にでも入れたくなる食材。脳死で入れとけば間違いない。気持ちに余裕があれば切り刻んで入れたりするけど、疲れていると一丁丸ごとドボンしてしまう。

湯豆腐も美味しいけど、鍋でいいじゃんって思う。湯豆腐のような上品さを私が必要と思っていないだけかもしれない。

山形の「だし」を乗せる

「だし」とは何かというと、

”野菜を生のまま手軽に食べられる夏の山形県の定番料理。山々に囲まれ夏は高温多湿で非常に暑さが厳しい村山地域を中心に食べられてきたといわれており、現在でも地元の人々の生活に定着している一品。暑さで食欲がなくなる時期に、きゅうりやなすなど水分を多く含む夏野菜と青じそやみょうがなどの香味野菜を刻んで和え、味付けしたのが「だし」”

(引用:だし 山形県 | うちの郷土料理:農林水産省

だそうです。画像も上のサイトからです。

https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/img/yamagata_8_1.jpg

これを豆腐にかけて食うのがまあ美味い。初めて食べたのは多分高校生くらいで、東京駅の売店で売っていたのを買って目が飛び出るほど美味しかったのを覚えている。

味噌汁

定番なので言うことはないです。まあ好きよね。亜種として豚汁に入ってるのもまた良し。

味噌ラーメンに入れる

これはあまり共感されないやつ。高校生の頃は、なかむらやで「ごつ盛り コーン味噌ラーメン」と絹ごし豆腐を買って、ラーメンの中にドボンして食うのをたまにやって友達からドン引きされていた。でも味噌も豆腐も大豆なんだから合うでしょ、って思っていたし今も思っている。実質味噌汁だし。みなさんやってみてください。私はもうやらないけど。

 

あとはポン酢で食ったり胡麻だれや胡麻ドレで食ったりもするけど、普通に美味いだけで特に言うこともないので省略します。あとサラダに入ってるのも当然好きで、居酒屋とかでサラダを頼むときは高確率で豆腐サラダになります。

 

 

 

今でも豆腐は好き。でも、あの頃ほど執着することはなくなった。一人暮らしをしたら毎日豆腐を食うぞと思っていた時期もあったけれど、実際やってみるとそんなに毎日食いたくはないなぁとなってしまう。なんでだろうね。実家で食ってる時が一番美味しかった。

京都にはたくさん豆腐屋があり、美味しい豆腐がたくさんあると言われている。けれど、ビビッとくるものにはまだ出会えていない。私が使っている調味料の問題かもしれないなとは思っているけど、それだけじゃないような気がする。

 

なんとなく、もうあの頃には戻れないんじゃないかって思っている。

 

 

(追記):書くにあたって調べていたところ、中村酒店が閉業したという情報を目にした。Googleマップ上での情報だけで、他は調べてみてもよくわからないから真偽は今のところ不明だけど、本当だったら寂しいことだ。