思い出の向こう側

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家主「石のような自由」

去年の暮れにリリースされた家主の新譜「石のような自由」。これがとても良い。

 

家主 - 石のような自由

各配信サイトで配信されているので是非。CD版は3/6発売とのことです。

 

全11曲で、なんというか全体的にいい意味での開き直りが表現されている。家主の以前の曲で言えば、「オープンカー」での「僕たちの金なんだ どう使っても構わないだろう」みたいな。誰からどう言われようとこれが家主なんだ、っていうのを感じている。あとその開き直りは孤独でいることの開き直りでもあるような感じがあって、「ひとり」でいることを歌っているアルバムであるような気がしている。

 

1.「SHOZEN」

「悄然」という感情を歌っていて、それはこのアルバムを通してのテーマなのかもしれないななんて。「僕は僕を責めるのやめよう」「僕が蒔いた絶望の種が 希望という名の花をつけるかもしれないし」なんて歌うのに、「悄然」という気持ちを別に解消しようとするわけではない、という言葉の使い方が好きですね。

 

2.「きかいにおまかせ」

「時間通りに起きるのがツラくなってきたんだ」から始まって、「今はなんだかそんな日々の渦の中で なんとなく平泳ぎ」ってフレーズが好き。なんとなく平泳ぎ。

 

3.「庭と雨」

イントロのギターフレーズから好きです。なんかかっこいいねこの曲。間奏とかでもかっこいい。

 

4.「歩き方から」

なんかめっちゃ暗めの曲。「今持つべきものは自信で」と言い聞かせる曲で、そのフレーズが繰り返されるだけにその根深さを感じ取れるというか。「器用に不器用やるクセがほら とっくにバレているのに」というような言葉がたまらないですね。こういう言葉を身体から生み出していきたいなと思ったりする。

 

5.「部会」

「例えば僕らが意味のない生き物だとしても 関係ない 関係ないのさ」「例えばあなたが僕らを遠ざけても 気にしない 気にしないのさ」

ノスタルジックな響きの中で、開き直って生きていく歌。私にはどうも意味を追い求めてしまう癖があるし、誰かの目もどこか気になってしまう部分があるけれど、そんなものを笑い飛ばしてしまえるような感じがして、すごく好きです。笑い飛ばすというよりは、どこ吹く風というべきかな。もっと俗世から離れていて達観しているような曲に聴こえるが、それは諦観なのかもしれない。

 

6.「ひとりとひとり」

3年前に発表されていた曲。そして私が家主を知って、好きになった曲でもある。

「自分の弱さを他人に見せられたら 自分の力をテラわず歩けるか」「人はいつでもどこにいても ひとりとひとりが集まっているだけだろ? へい、気にしないでくれ へい、俺は楽しんでるよ 気にしないでくれ 風に葉が揺れているよ」

会社への道でよくこの曲を口ずさんでいた。自分の弱さを認められるようになったのはこの曲のおかげでもあると思っている。間奏も含めて全てが好き。

「部会」と同じく、やはり諦観からの開き直りというか、他の誰の物差しでもない自分の物差しで生きていこうとするようなイメージがある。他人から理解され得ないとなった時に、踏み潰していくぞという感じではなく、まあいいやって感じで。

 

7.「オープンエンド」

王道感がある。「Where do I wanna go?  Do I want ?」と問いかけながら我々は生きている。本当にやりたいこと、本当に行きたい場所、歩みたい人生。そういったものへの渇望というか、叫びが伝わってくるような気がして、すごく好き。

 

8.「耐えることに慣れ過ぎている!」

「ここを離れて向かう場所はあるのかい?まぶたを閉じて深く息を吸うことしか」あたりの音がすごく好き。あと間奏。

 

9.「free as a stone」

始まりのコーラスから心を掴まれる。「オープンエンド」では「意味はまだあるさ」と希望を見出していたけれど、そこからの答えとして「僕には何が出来るのだろうか 僕には何が見えるのだろうか 下らない毎日があるだけだろ」「僕を自由にしたいよ やるべきことなど、生きる理由のひとつ見つからなくても」と。あと「下らない毎日」から始まって「下ることのない日々があるだけ」と結ぶの、言葉遊びのようだけれどいいですね。

 

10.「Dreamy」

結構前に発表されてた曲の新録。心地よい響きの曲で、結構好き。

 

11.「今日はひとりでいようね」

締めの曲というべき感じで、孤独というか、結局「ひとり」なんだというこのアルバムに通底するものを体現している。「誰とも会わない記録を伸ばす」というフレーズが好きです。最後、「クズばかりが報われる世の中でも僕は君を信じているよ!」と歌った直後に「今日はひとりでいようね」で終わるのがなんかひねくれ感あっていい。

 

以上11曲。もっと音楽的なことを語れるとこのアルバムの良さをちゃんと伝えられるような気がするんだけど、私には素養がなさすぎて辛い。でもとにかくいいです。「ひとり」でいることを肯定してくれるこの曲たちが私は好きで、多分ずっと聴き続けると思う。2021年発表のアルバム「DOOM」も素晴らしかったけど、その上をいったと思う。今年はツアーに何回か参戦できると思うし、今からそれが楽しみで仕方ない。本当にいい音楽を作るんですよね。家主にはブレイクして欲しいような気持ちもあるし、今のまま「草野球」(本人たちがインタビューで言っていた)を続けて欲しいような気持ちもあるが、とにかく変わらずいい音楽を作り奏でていって欲しいな。